
東洋医学のいちばん底には、陰陽という2つの傾きでものを見る発想があります。抽象的に聞こえますが、実務では寒熱──冷えているのか、熱がこもっているのか──という具体的な物差しになって現れます。
この物差しが分かると、「同じ悩みなのに手当てが正反対」という東洋医学の不思議が、不思議でなくなります。
陰と陽
夜と昼、静と動、内と外、冷と熱。古典は、あらゆるものを対になる2つの傾きに分けて観察しました。どちらが良い・悪いではなく、2つの釣り合いで状態を記述するための座標です。
冷ますのか、温めるのか
からだに当てはめたとき、まず問われるのが寒熱です。同じ「眠れない」でも、ほてって目がさえる不眠は冷ます方向、冷えて力が出ない不眠は温める方向。向きを間違えると、手当てはむしろ逆効果になりうる──だから東洋医学は、症状名より先に寒熱を確かめます。
※ 当サイトの結果ページで、証によって「お灸が主役」にも「お灸を控える」にもなるのは、この寒熱の向きが逆だからです。

実際の判定では、これらのサインを組み合わせて見ます。1つだけで決めるものではありません。
1日と1年のリズム
陰陽は、場所だけでなく時間にも当てはめられます。朝に陽が立ち上がり、昼にきわまり、夕方から陰へ切り替わって、真夜中に陰がきわまる──1日はこの満ち引きとして描かれます。1年も同じで、夏が陽の頂点、冬が陰の頂点です。
「夕方になるとほてる」「夜中に目がさえる」のように、時間帯で決まって変わる不調を、古典は陰陽の入れ替わりがうまくいっていないサインとして観察しました。当サイトの質問に「いつ悪化するか」を聞くものがあるのは、この見方を借りています。

陰陽・寒熱・表裏・虚実
寒熱に、表裏(不調が浅いか深いか)と虚実(足りないのか、余分が滞っているのか)を加え、全体を陰陽で束ねた4組8つの物差しを八綱と呼びます。証は、この座標系の上に置かれた点のようなものです。
第一講で「証は全体の傾きを読む」と書きました。その「傾き」を測る目盛りが、この講の陰陽と寒熱です。ここまでの4講で、当サイトの結果ページを読むための道具立てはそろいます。
※ この読みものは、東洋医学の考え方を学びとして紹介するものです。医療上の診断・治療ではありません。 気になる症状があるときは、まず医療機関にご相談ください。
