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EVIDENCE

根拠と限界

どこまで言えて、
どこから先が言えないのか

このページは、東洋診断.comが何を根拠にしていて、どこから先が言えないのかを書いたページです。当サイトの結果は医学的な診断ではありません。東洋医学の枠組みで、いまのからだの状態を言葉にして整理するためのものです。

これから整えるところを、先に書きます

  • 有資格者による監修は、まだ受けていません医師・薬剤師・鍼灸師による質問項目と配点のレビューはこれからです。
  • 配点は検証されていません質問の選択肢ごとの重みは制作者が組み立てたもので、実際の回答データによる裏づけはまだありません。
  • 1つの症状につき8問しか聞いていません研究で使われる証の判定尺度は30項目を超えるものが多く、それに比べると簡易なものです。

そのうえで、名称・分類・判定の考え方をどこから取っているかを、出典つきで以下に示します。

01

証の名称は、WHOの国際疾病分類に載っている

当サイトが使う「証」の名称と分類は、WHOのICD-11(国際疾病分類 第11回改訂版)第26章 補助章「伝統医学の病態」のモジュールIに収載されているものに対応します。この章には196の証がコードつきで収められています。当サイトが扱う主要な42の証について、実際のコードを確認しました。

このモジュールIは、WHO自身の説明によれば「中国・日本・韓国の分類を国際的に調和させた統合集合」です。中国だけの体系ではありません。

実際のコードの例

  • 心脾両虚SF6JHeart-spleen deficiency pattern (TM1)
  • 肝気鬱結SF57Liver qi stagnation pattern (TM1)
  • 気虚SE90Qi deficiency pattern (TM1)
  • 瘀血SF04Blood stasis pattern (TM1)

「効果が認められた」という意味ではありません

ここは誤解されやすいので、はっきり書きます。第26章についてWHOは「任意で使う下位分類であり、死因統計に用いることを意図していない」と明記しています。国際的に統計が取れるように名前と番号を整理した、という意味であって、治療効果が認められたという意味ではありません。当サイトは「WHOが認めた」という言い方をしません。

「体質診断」ではありません

WHOは、証と体質を別のものとして定義しています。

  • 証(pattern)ある時点における患者の全体像
  • 体質(constitution)相対的に安定したもので、一部は遺伝的に決まっている

当サイトが扱うのは前者です。体質そのもののラベルではなく、いまの状態の記述なので、時期が変われば結果も変わります。

WHOの規定(原文)

Coding should always include also a category from the chapters 1-24 of ICD.

コーディングにあたっては、必ずICDの第1章から第24章のカテゴリも併せて含めなければなりません。

第1章から第24章は、いわゆる西洋医学の病名です。つまりWHOは「証のコードだけでは成立しない。必ず病名と併記せよ」と定めています。当サイトが「まず医療機関で調べてください」と繰り返すのは、この規定と同じ考え方です。

02

どうやって判定しているか

症状ごとに8つの質問があり、選択肢を選ぶと、いくつかの証にそれぞれ点数が入ります。特徴的な所見ほど高い点になります。

表示している数値は満点比です。「その証で見るべき所見が、どれだけ揃っているか」を、その証が取り得る最大点に対する割合で出しています。他の証との相対比ではありません。所見が薄ければ、1位でも数値は低く出ます。

断定しない条件を、先に決めています

  • 45%断定してよい下限1位がこれ未満なら、ひとつの証に断定せず、複数の候補を並べます。
  • 12pt1位と2位の差差がこれ未満なら、どちらとも決められないものとして扱います。
  • 25%何も言わない線1位がこれ以下なら、どの証にも当てはまらないものとして表示します。

後述するとおり、証の判定は専門家同士でも一致しにくいものです。迷ったら断定しない側に倒す設計にしています。

この方式には、日本での先例があります

症状に点数をつけて合計し、しきい値を超えたら「その傾向がある」と判定する方式は、当サイトの独自の発明ではありません。日本の漢方診療では、寺澤捷年『症例から学ぶ和漢診療学』(医学書院)で示された「気血水スコア」が同じ考え方をとっており、日本東洋医学雑誌に載る臨床研究でも実際に使われています(日本東洋医学雑誌 69(4):321-327, 2018)。

気血水スコアには、当サイトの設計に効いている特徴が3つあります。症状ごとに点が違うこと、しきい値が証ごとに違うこと(気虚は30点超、瘀血は21点超、水滞は13点超)、「程度の軽いものは半分の点」というルールがあること。当サイトが採用できているのは1つ目だけで、2つ目と3つ目はまだ実装していません。

LIMITATION

証の判定は、専門家同士でも一致しません

当サイトにとって都合の悪い事実ですが、これを書かずに根拠の話はできません。

  • 0.34専門家どうしの一致度(κ)複数の専門家が同じ患者を診たときに、同じ証と判断した度合い。1が完全一致、0が偶然と変わらない水準です。21研究をまとめた系統的レビューの平均値(Jacobson 2019)
  • 35.9%細かい分類が一致した割合日本の漢方データでの数字です。大枠(虚実)なら85.9%が一致しますが、細かくなるほど落ちます。Maeda-Minami & Yoshino 2021
  • 69不眠で報告された証の数上位10の証を並べても、報告例の77.4%しか覆えません。証の切り方は、それだけ幅があります。Poon 2012

さらに、構造化した質問票を使っても専門家間の一致度は改善しなかったという試験があります(Schnyer 2019)。当サイトの方式が「専門家より正確」ということを意味しないのは、この点からも明らかです。1つの証に断定せず、複数の候補を並べ、所見が薄いときは「当てはまりません」と出すのは、これらの数字を踏まえた設計です。

04

鍼灸と漢方について、いま分かっていること

「何と比べたか」を必ず見てください

何もしなかった人と比べた場合──「鍼を受けた人」対「順番待ちで何もしていない人」。この比べ方だと、鍼のほうがよくなったという結果が出やすくなります。ただしここには、通ったこと・話を聞いてもらったこと・「よくなるはずだ」という期待も全部含まれています。

偽の鍼(シャム鍼)と比べた場合──「本物の鍼」対「刺さない鍼」。受ける人にはどちらか分かりません。通うことや期待の効果を差し引いて、鍼そのものの効果だけを見ようとするものです。

当サイトの書き方

多くの症状で、前者では差がつくのに、後者ではほとんど、あるいはまったく差がつきません。この差をどう読むかは研究者のあいだでも割れています。

当サイトはどちらの立場も取りませんが、前者の結果を後者の結果であるかのように書くことはしません。

症状ごとの状況

症状何と比べて、どうだったか研究の質
片頭痛の予防偽の鍼より少し良い。ただし差は小さい。予防薬とは少なくとも同等の可能性中程度
緊張型頭痛の予防偽の鍼より良い(頭痛が半分以下になった人 51%対43%)中程度
腰痛(慢性)偽の鍼との差は、臨床的に意味があるとされる水準に届いていない。何もしない場合と比べると差がある偽の鍼比は低〜非常に低
便秘(慢性・重症)偽の電気鍼より良い(週の排便が0.90回多い)中程度。ただし中国の単一研究グループの1試験に依存
不眠「眠れた感じ」は偽の鍼より改善するが、実際の総睡眠時間には差がない低〜非常に低
胃腸の不調(機能性ディスペプシア)他の治療より良い・安全とは言えない低〜非常に低。7試験542名のみ
慢性疲労偽の鍼より良いが、著者自身が効果を過大評価している可能性を明記
気分の落ち込み偽の鍼との差はHAMDで1.69点。その大きさに意味があるかは疑わしい
PMS改善の可能性はあるが、根拠は1試験67名に依存。標準治療との比較試験はゼロ低〜非常に低
月経痛有効かどうか判断できない
アレルギー性鼻炎・花粉症米国耳鼻咽喉科学会は選択肢として提示してよいとし、米国アレルギー学会は推奨も否推奨もできないとする学会間で評価が割れている
アトピー性皮膚炎重症度とかゆみは改善。皮疹の面積スコアとIgEには差なし低。8試験463名のみ
肩こり・首のこり偽の鍼と比べて痛みに有意差なし。機能面の改善はあり「肩こり」自体のレビューは存在しない
下痢・過敏性腸症候群偽の鍼と比べて、症状の重さもQOLも改善なし中。明確に否定的
更年期のほてり偽の鍼と差なし。さらにホルモン補充療法より劣る低〜非常に低。否定的
めまい判断材料なしレビューが見つかっていない
冷え・むくみ判断材料なしレビューが1本もない
動悸判断材料なしレビューが1本もない
肌荒れ(アトピー以外)判断材料なしレビューが見つかっていない

「レビューが見つかっていない」と書いている症状(めまい・冷え・むくみ・動悸・肌荒れ)は、効かないことが証明されたという意味ではありません。調べた研究がまだない、という意味です。一方、下痢・過敏性腸症候群と更年期のほてりは、偽の鍼と比べて差がなかったという結果が実際に出ています。この2つは意味が違うので、分けて書いています。

漢方で「強い推奨」が付いているのは、ひとつだけ

当サイトが扱う16の症状のうち、日本の診療ガイドラインが漢方薬に「エビデンスレベルA・推奨の強さ強」を付けているのは、機能性ディスペプシア(胃の不調)に対する六君子湯だけです(日本消化器病学会『機能性消化管疾患診療ガイドライン2021』)。

他の処方については、主要な評価項目で差がつかなかった大規模試験のほうが多いのが実情です。だから当サイトは、処方について「〜に使われてきました」という書き方しかしません。

安全性も、同じ大きさの文字で書いています

漢方薬には副作用があります。甘草による偽アルドステロン症は用量が増えるほど頻度が上がり、山梔子の長期使用では腸間膜静脈硬化症が報告されています。鍼灸にも、内出血や一時的なだるさ、まれに気胸や感染の報告があります。

これらは結果ページの各アプローチの末尾に、本文と同じ文字サイズで書いています。

05

当サイトの立場

  • 当サイトは医療機関ではなく、診断・治療を行う立場にありません
  • いま受けている治療をやめることを、すすめることはありません
  • 特定の院・特定の薬をすすめる立場にありません
  • 効果を保証する表現は使いません
  • 急いで対応したほうがよい症状については、判定より先に医療機関の受診をご案内します

運営者は医療系の資格を持っていません。それは弱点であると同時に、どこか特定の院や薬に寄る理由がない、ということでもあります。中立でいられる代わりに、判断の根拠は全部見せる。それがこのページの役割です。

06

参考にした資料

名称・分類の典拠

  • World Health Organization. ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics, Chapter 26: Supplementary Chapter Traditional Medicine Conditions, Module I(2025-01 release)
  • 日本東洋医学会 辞書編纂委員会 編『日英対照漢方用語辞書:基本用語』メディカルユーコン、2020年
  • 中华人民共和国国家标准 GB/T 16751.2—2021《中医临床诊疗术语 第2部分:证候》(2021年)
  • 東洋療法学校協会 編/教科書検討小委員会 著『東洋医学概論(新版)』医道の日本社、2015年
  • 吴勉华・石岩 主編《中医内科学》全国中医药行业高等教育「十四五」规划教材、中国中医药出版社
  • 寺澤捷年『症例から学ぶ和漢診療学 第3版』医学書院、2012年

限界に関する研究

  • Jacobson E, et al. Systematic review of the reliability of traditional East Asian medicine diagnoses(21研究、平均 Cohen's κ = 0.34)
  • Maeda-Minami A, Yoshino T, et al. 日本漢方における証の一致度に関する研究(2021)
  • Poon TL, et al. 不眠に対する中医学的証の分布に関する研究(2012)
  • Schnyer RN, et al. 構造化評価による証判定の一致度に関するRCT(2019)

鍼灸・漢方のエビデンス

  • Cochrane Database of Systematic Reviews(片頭痛 CD001218/緊張型頭痛 CD007587/慢性腰痛 CD013814/不眠 CD005472/過敏性腸症候群 CD005111/更年期 CD007410/うつ CD004046/PMS CD005290)
  • Liu Z, et al. Ann Intern Med 2016;165(11):761-769(便秘)
  • 日本消化器病学会『機能性消化管疾患診療ガイドライン2021 ── 機能性ディスペプシア(FD)改訂第2版』

このページの記載は、一次情報にあたって確認できたものだけを載せています。確認が取れなかった数値や書誌情報は、意図的に書いていません。誤りにお気づきの場合は相談窓口からお知らせください。訂正します。

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